「柿本神社本殿」の説明板(益田市教育委員会による)を読み、好奇心が芽生え、

1.高津の「柿本神社」建立に関する歴史(起源~現在地)的情報
2.柿本神社本殿の島根県指定有形文化財…建造物的価値の情報
3.社宝(重要美術品認定の『御法楽御短冊』)に関する情報


私なりに詳細に調べた内容を特集しています。

今回は、
2.柿本神社本殿の島根県指定有形文化財…建造物的価値の情報 

  本殿は正面三間、側面三間の入母屋造妻入(いりもやづくりつまいり)、桧皮葺(ひわだぶき)で、唐破風造(からはふづくり)の向拝(こうはい)を有し、津和野の方角を向いています。 
  殿内は亀井家の四ツ目結び紋を配した板扉によって外陣と内陣に区切られ、内陣の中央後方に須弥壇(しゅみだん)があり、向唐破風造屋根を戴く厨子が置かれています。

さて、本分前半(赤字)部分を要所ごとに分解してみました。

①本殿は正面三間、側面三間の入母屋造妻入(いりもやづくりつまいり)
②桧皮葺(ひわだぶき)で、
③唐破風造(からはふづくり)の向拝(こうはい)を有し、
④津和野の方角を向いています。

では、益田市「高津の柿本神社 本殿」の画像を見てみましょう。

高津 柿本神社本殿 


①「入母屋造妻入(いりもやづくりつまいり)」なのか?
妻入り:屋根の面からみて、横の壁に入り口を持つもの…当初、高津柿本神社の本殿は「春日造り」では?と思いましたが。本殿の後ろ側にも庇が施されており(※神社としては、珍しい)入母屋造と(私も)判断しました。

※構造様式的には神社建築様式というより、寺院建築様式に近いものが感じられます。「向拝」部を除けば、京都、往生極楽院(三千院)の阿弥陀堂に似ています。

※あるいは、神社建築様式「中山造」の可能性も…岡山県津山市「中山神社」をはじめとした当地の神社の本殿の建築様式と特徴が一致しています。(中山神社では唐破風造(からはふうづくり)の向拝(こうはい)もあります。)

※本当に注意深く観察するとわかるのですが、構造的には錣葺屋根です。(元来は錣葺(しころぶき)だったのかもしれません。)

いずれにしても、高津柿本神社「本殿」は大変珍しい建築様式といえます。

②の「桧皮葺(ひわだぶき)」…冬の寒い時期に撮影したせいか、「とても暖かそう」に感じました。

③「唐破風造(からはふづくり)」の「向拝(こうはい)」…は専門的で難解でしたが、よく調べてみると「唐破風造(からはふづくり)」は形状的な特徴。そして「向拝(こうはい)」は社殿の屋根の中央が前方に張り出した部分であることが分かりました。文字による説明だけでは(多分)分かりにくいと思いますので補足画像を掲載します。

※「桧皮葺(ひわだぶき)」

桧皮葺(ひわだぶき)


「桧皮葺」の屋根…見ているだけで、まるで、毛皮のような柔らかい暖かみを感じる質感です。
これだけの「桧の皮」を確保できたこと…かつての津和野藩がいかに森林資源が豊かであったことか想像できます。(一方、今後は、修復等では大変、苦労する事だろう…という予測もできますネ)

補足的画像③「唐破風造(からはふづくり)」の「向拝(こうはい)」について

高津柿本神社 本殿 解説 


補足的用語:さらに、向拝の手前には独立した「階隠し」(はしかくし)の形状も「唐破風造」であることが確認できます。

本当に、凝った造りです。まさに、益田市の至宝の一つと言えるでしょう!!

私は、これまで、神社に関わる建築用語は己の無知ゆえ、あまり気にしませんでしたが、今回気合いを入れて調べ、地元、益田市の「高津柿本神社 本殿」を眺めさせていていただき、その建造物的価値に気付きました。

  人は知る(認識する)ことにより、全く新たな価値に気づく事がある!…それが地元で卑近なモノやコトであれば、なおさら感動は高まるものだ!。とつくづく思いました。


◆本殿は「津和野の方角を向いています。」か?

最後は…

④について…高津柿本神社本殿の建築的技法には関係ないのですが…本殿が「津和野の方角を向いています。」は疑問です

本殿が向いている方向は、東西南北の「南南東」です。津和野は(高津柿本神社から「青野山」が確認できるので、その方向を頼りにすると)南南西側、となります。
唯一、④の記載…高津の柿本神社が「津和野の方角を向いています。」という表記については疑問です?